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職場がどうも合わないなら辞めても問題ない訳

職場がどうも合わないなら辞めても問題ない訳

「脱落=悪い」ではありません(写真:Graphs/PIXTA)
現代はますます複雑さを増している。それを反映するように、ビジネスでも、研究開発でも、スポーツでも、分野を狭い範囲に絞って深掘りする「超専門化」がもてはやされている。
その風潮に警鐘を鳴らすのが『RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる』の著者、デイビッド・エプスタイン氏。「幼児からの超英才教育『意外な落とし穴』の正体」(2020年4月7日配信)に続いて、本書を一部抜粋のうえ、再編集してお届けする。

一大ブームとなった「グリット」は誤解だらけ

著書『グリット(やり抜く力)』で有名な心理学者のアンジェラ・ダックワースは、「やめること」に関して最も有名になった研究を実施した。

ダックワースはこの研究で、米国陸軍士官学校(ウエストポイント)の基礎訓練兼オリエンテーションで、どの新入生が途中でやめるかを予測した。この訓練は、昔から「ビースト・バラックス(獣の小屋)」という別名で知られている。6週間半にわたる肉体的・精神的に過酷な訓練の目的は、高校を卒業して夏休み気分の若者たちを、見習いの士官に変えることだ。士官候補生は朝5時半までに整列し、ランニングか自重トレーニングを始める。

朝食の食堂では、椅子にまっすぐに座って、顔を皿のほうに寄せずに、食べ物を口まで運ばなければならない。朝食のあとは、授業と肉体的訓練が待っている。例えば、窓のない催涙ガス室でガスマスクを外して、顔に焼けつくような痛みを感じながら、何かを暗唱する。嘔吐する者もいる。消灯は午後10時で、また翌朝には1から始まる。この訓練では、新入生の意欲が危うくなる。

ウエストポイントに入るためには成績優秀であるうえ、運動能力に優れ、連邦議会議員の推薦も得なければならず、怠け者はそもそもビーストに参加できない。それなのに、最初の1カ月が終わる前に、何人かがやめていく。入学を許可されるために、唯一かつ最も重要な基準となるのが、共通テストの成績や高校の順位、体力テスト、リーダーシップなどを総合して得点化した「志願者総合評価スコア」だ。

しかし、ダックワースは、このスコアからはビースト終了前に誰が脱落するかを予測できなかった。そこで、情熱と忍耐力の組み合わせ、つまり彼女が「グリット(やり抜く力)」とうまく言い表したものを調べることに決めた。

ダックワースは自己評価テストを設計し、グリットの2つの構成要素について調べた。構成要素の1つは、基本的には労働倫理とレジリエンスで、もう1つは「興味の一貫性」、つまり自分の望みをしっかりと把握していることだ。

2004年のビーストの開始時に、ダックワースは1218人の新入生にこのグリット調査を実施した。

新入生は12の項目を読んで、それがどのくらい自分に当てはまるかを5段階で自己評価する。例えば、シンプルに労働倫理を問う項目(「私は努力家です」「私は勤勉です」など)もあれば、忍耐力や焦点がぶれないことを問う項目(「私は目標を決めるが、その後、別の目標に変えることが多い」「毎年、興味のあることが変わる」)もあった。「グリット・スコア」では「志願者総合評価スコア」よりもよい予測ができた。

そこで、ダックワースは研究の範囲をほかの領域にも広げた。例えば、単語のつづりの正確さを競う全国大会「スクリップス・ナショナル・スペリング・ビー」の決勝戦などだ。出場者がこのスペリング・コンテストでどこまで進めるかを、言語性IQ(言語を使った思考力や表現力の知能指数)とグリットの両方で予測できることをダックワースは示した。

最もよいのは言語性IQとグリットを両方とも山ほど持っている場合だが、グリットがほとんどなくても高い言語性IQが高ければ補え、逆に、言語性IQが低くても高いグリットで補えた。

ダックワースの研究は、どんどん1人歩きするようになった。スポーツチームやフォーチュン500に含まれている企業、学校、米教育省などがこぞってグリットを推奨し、グリットを育てようとし、グリットのテストまでしようとした。ダックワースはこの研究によってマッカーサー賞、通称「天才賞」を受賞したが、それにもかかわらず、この熱狂ぶりに対して、ニューヨーク・タイムズ紙の論説記事の中で次のように思慮深く応じた。

「私は意図せずに、自分が強く反対する考えに加担してしまったのではないかと心配している。それは、よい悪いを判定するような性格評価だ」

NBA選手は背が低いほうが成功する?

グリットはほかの面でも、その本来の調査結果以上に拡大解釈され、誇張されている。1つには調査範囲の問題がある。士官候補生が「志願者総合評価スコア」を基準に選ばれたという事実は、統計学者の言う「範囲の制限」につながる。

士官候補生はこのスコアが高いから選ばれたのであって、選抜された人たちの間のスコアのばらつきは非常に狭い(範囲が制限されている)。そうなると、選考のプロセスで評価されていない変数が、比較のうえで突然に重要性を増すようになる。

これをスポーツにたとえると、NBA(全米プロバスケットボール協会)の選手だけを調査対象として、バスケットボール選手の成功要因を調べたようなものだ。調査を実施したら、成功を予測する指標として、「身長は重要ではなく、意志の強さが重要だ」という結論になる可能性がある。

そもそも、人類全体の中でも背の高い人がNBAの選手に選ばれている。だから、調査対象者の間での身長のはらつきは小さいため、成功要因として、身長は重要に見えなくなってしまう。

また、年によっては「身長と得点は反比例の関係にある」という結果が出る可能性もある。研究者が「NBAの選手ではない人は調査対象から外されている」ことを公表しなければ、「身長の低い子を持てば、NBAで得点を稼げるようになる」と親たちは思うだろう。

グリットやそのほかの性質の重要性は、対象者の範囲をもっと拡大すると、違って見えてくるはずだ。ウエストポイントの合格者だけでなく、高校卒業者全体の中から調査対象者を無作為抽出してビーストでの生き残りを予測したら、肉体的な強さや学校の成績、リーダーシップの経験などが、グリットよりも大きな成功要因になるだろう。

ダックワースと共同研究者も、とくに選ばれた人たちだけを調査対象としたことにより、「この調査の外的妥当性[一般化して、ほかの集団にも使えること]を必然的に制限することになった」と述べている。新入りの士官候補生は、グリットのスコアがどうであれ、大半がビーストをやり遂げる。ダックワースが調査した最初の年は、途中でやめたのは1218人中71人、2016年は1308人中32人だった。

「脱落=悪い」ではなく、マッチ・クオリティーが重要

ここでもっと突き詰めて考えるべき点は、ウエストポイントをやめたことはよい決断だったのか、ということだ。

ウエストポイントの卒業生によると、ビーストやその後のカリキュラムで、士官候補生が学校をやめていく理由はさまざまだという。「どちらかというと頭脳派で、肉体派ではない候補生たちは、ビーストは期間が短いから何とか戦って、新学期にたどり着く。肉体派にとっては、ビーストは最高の場所だと思う」と2009年に卒業し、情報将校としてアフガニスタンで勤務したアシュリー・ニコラスは言う。

しかし、ビーストを修了したものの、そのあとになってウエストポイントは自分の能力や興味に合っていないと気づく生徒もいる。「1学期には、学業についていけなくて、ビーストのときよりもっと多くの生徒がやめていった。ビーストでは、ものすごくホームシックになったか、あまり合ってないと気づいた人たちがやめた。合っていないと思った生徒たちは、自分ではそれほどウエストポイントに来たいと思っていなかったのに、周囲のプレッシャーを受けて入った人が多かった」。

つまり、ビーストの間にやめた少数の人たちは、忍耐力がなかったというより、ウエストポイントとのマッチ・クオリティーの低さ、つまり、自分に合う場所ではないと知り、対応しただけだった。

マッチ・クオリティーは、実際にやってみるまではわからない。カーネギーメロン大学教授で経済学と統計学を担当するロバート・ミラーは、「複数のスロットマシンのプロセス」という形でキャリア・マッチングのモデルをつくった。

ちなみに、ウエストポイントに通うというのも、もちろん大きなキャリア上の選択だ。「複数のスロットマシンのプロセス」とは、次のような架空のシナリオから成る。1人のギャンブラーがずらりと一列に並んだスロットマシンの前に座っている。レバーを1回引いて得られる賞金は、スロットマシンごとに異なっている。

ギャンブラーはいろいろなマシンを試してみて、賞金が最も高くなる方法を探す。ミラーはマッチ・クオリティーのプロセスもこれと同じだと示した。最初は何も知識がないところから始め、このマシンでよいのかどうか、できるだけ早く情報が得られるやり方でさまざまな道を試す。そして、どこにエネルギーを注ぐべきか、だんだんと考えを修正していく。

ミラーによると、若者はリスクの高い仕事にひかれる傾向があり、それは「若くて愚か」と表現されたりもするが、実はまったく愚かなことではないという。それは逆に理想的だ。

若者は年長の社会人よりも経験が少ないので、最初に試すべきなのは、リスクもリターンも大きく、多くのフィードバック情報が得られる仕事だ。プロのスポーツ選手や俳優を目指したり、ベンチャー企業を立ち上げたりするのは、成功の可能性は低いが、うまくいけば見返りは大きい。

また、つねにフィードバックが得られ、容赦なく選別される環境なので、挑戦してみて自分に合っているかどうかが早く学べる。少なくとも、フィードバックが少ない環境よりは学びが早い。もし合っていないと判断したら、別のものを試し、ほかの選択肢や自分自身についての情報を集めていく。

合っていないと感じたら早くやめる

キャリア関連の本で世界的な人気を得ているセス・ゴーディンは「やめる人は決して勝てない」という考え方を否定する本を書いた。それによると、「勝者」(自分のドメインでトップに立つ人)は合っていないと感じたら早くやめ、やめることについて悪い感情を抱かないという。ゴーディンは、「やめる勇気がなくて仕事にしがみついていると失敗する」と言う。

ただし、単に仕事が大変だからという理由でやめることは勧めていない。長い道を歩むうえで、困難に屈しないことは強みになる。しかし、やめるべきときがわかることは、戦略的に非常に大きな強みなので、何かを始めようとするときには、やめるときの条件を挙げておくべきだとゴーディンは言う。彼によると、ここで最も大切なのは、やめようと思う気持ちが、忍耐力が足りないためなのか、それとも、もっと自分に合うものを見つけたからなのかを感じ取ることだ。

ビーストは、スロットマシンとして最適だ。非常に優秀な高卒者のグループが、軍隊経験が微塵もない状態でウエストポイントのレバーを引く。そうすることで彼らはハイリスク、ハイリターンのプログラムを開始して、その1週目から、自分が軍隊の規律に合っているかどうか、大量の情報を得ることになる。

大多数が最後までやり抜くが、大勢の若者が1人残らず、自分が入ろうとしている世界を正確に理解しているとは考えにくい。途中でやめた人たちは、本当は最後まで続けるべきだったのだろうか。もし、将来を考え直したのではなく、瞬間的にパニックになってやめたのだとしたら、彼らには軍隊生活についての新情報が必要だったかもしれない。だが、それを提供すれば、おそらくもっと多くの人がもっと早く脱落するはずだ。

ロンドン大学ビジネススクールの教授で、組織行動論が専門のハーミニア・イバーラは、コンサルタントや銀行員、起業家や弁護士、医師、大学教授、IT技術者などのキャリア追跡調査を通じて、「人は人生を通じてマッチ・クオリティーを最適化する」と結論づけた。

具体的に言うと、人はさまざまな活動、グループ、状況、仕事を試して、よくよく考えて、自分の物語を変化させていく。そして、同じことを繰り返す。

自分を見つめてもマッチする仕事はわからない

一方、キャリアや性格を診断するツールや、コンサルティング業界は、これとは正反対の「自分を見つめれば、完璧に自分にマッチする仕事が見つけられる」といった概念をベースにしていて、宣伝コピーにも使っている。

職場がどうも合わないなら辞めても問題ない訳

イバーラは言う。「自分の強みを見つけるためのツール類(ストレングス・ファインダーなど)は、自分がこれから成長し、進歩し、才能を開花させ、新しい何かを見つけることをまったく考慮に入れずに、自己分析させようとする。それでも、人は答えが欲しいので、こうしたフレームワークはよく売れる。それに比べて、『何かを試して、何が起こるか見てみよう』と打ち出すのは難しい。まず行動、それから考える」。そして、人には可能性が無限にあることを、社会心理学を活用しながら説明する。

「それらの可能性は、実際に行動することで発見できる。新しい活動、新しいネットワークの構築、新しいロールモデルの発見によって、人は可能性に気づく」

ウエストポイントの士官候補生は、高校を卒業したばかりのときには、スキルもなく、世界にあるさまざまな仕事の選択肢についてもほとんど知らない。だから、グリット調査の「私は目標を決めるが、その後、別の目標に変えることが多い」という項目には、「ノー」と答えていたかもしれない(「イエス」と答えるとグリットの評価は下がる)。

しかし、それから数年たつと、自分のスキルや興味についてもっとわかるようになる。すると、別の目標を追いかけることは、グリットに欠ける人の道ではなく、賢明な人の道となる。

(次回に続く)

東洋経済オンライン

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